これから紹介する内容は、一般道における安全運転を目的としたメソッドである。無謀な運転、暴走運転、モータースポーツそのものを目的とした内容ではない。
ただし、モータースポーツの中で培われてきた、車の挙動を理解する考え方、操作の正確性、無駄を減らす運転といった要素を、一般道で安全に使える形に落とし込んでいる。
道路交通法を守った基本的な運転については、別途用意している運転マニュアルを参照してほしい。本メソッドではそれらを前提としたうえで、より安全に走ること、車の挙動を理解すること、燃費を向上させること、ぶつけないための車両感覚を身につけることを目的としている。
特に、車両感覚を磨くことを主目的としている。
以下の2本は、操作の正確性と車両挙動の理解を示すための参考動画である。一般道での無謀運転を推奨する意図はない。
止まる・曲がる・加速する 一般道もモータースポーツも基本は同じです。
最初に重視するのは、一定速度で走る能力である。スピードメーターに頼りすぎず、自分の感覚で速度を保つ練習を行う。
加減速が多い運転は、車が不安定になり、同乗者が不快になり、燃費も悪化する。一定速度を保つことは、安全性と快適性の基礎となる。
アクセルワーク、ブレーキワーク、ステアリング操作を雑にしない。急な操作を減らし、踏んだらどう反応するか、切ったらどう動くかを感じ取ることが重要である。
この項目にはステアリング(ハンドル)操作も含まれる。
初期段階では、車両の左右幅や前後の間隔を無理に意識しすぎなくてよい。まずは、車がどう動くのか、操作にどう反応するのかを体で覚えることを優先する。
車両感覚は後から自然に身についてくる。
車道外側線や路側帯などの白い線を基準にする。直線でもカーブでもよいので、白線から一定距離(例:30cm)を保って走る。
これにより、左側タイヤの位置やハンドル操作の微調整が身についてくる。ただし白線は、踏んだかどうかの感触が分かりにくいという欠点がある。
マンホールは踏んだ感触がはっきり伝わる。これは、狙ったところにタイヤを持っていく練習である。
多くのドライバーは、自分のタイヤがどこを走っているのか分からないまま運転している。マンホールを踏むことで、タイヤ位置を意識的にコントロールする感覚が身につく。
白線が盛り上がっていたり、踏むとガタガタする場所がある。そういった場所に、あえてタイヤを乗せて走ることで、左側タイヤの位置を身体で理解できる。
アスファルトと砂利、草地などが分かれている場所を利用し、あえてタイヤを砂利側に落としてみる。これにより、タイヤのギリギリの位置が把握できる。
タイヤの位置、車体外側(ボディ)の位置、ミラーの位置は一致していない。特にミラーはさらに外側にあるため注意が必要である。
実施できる場所は限られるため、交通量が少なく安全が確保できる場所で行う。
ここまでは車を直接操作する運動面の話だった。ここからは、メンタル面、体調面、フィジカル面について述べる。
重要なキーワードは、自律神経と血糖値である。
居眠り運転の原因は、慢性的な睡眠不足、過労やレジャー後などの疲労、食事による血糖値の乱高下の三つに分けられる。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、重要なのはバランスと量である。しかし自律神経は簡単に測れるものではなく、多くの人は測定した経験がない。
そのため、食事、運動、睡眠、休息といった日常生活の積み重ねが非常に重要になる。急に整えようとしても無理であり、生活習慣がそのまま運転に表れる。
血糖値をできるだけ変動させないことが重要である。血糖値が乱れると、ホルモンの動きにも影響し、集中力や判断力が低下する。
低血糖気質の人に限らず、食後に眠くなる人にとっても重要なポイントである。
もう一つ重要なのが社会性である。これは、むしろ最も重要な要素かもしれない。
言葉や理屈で理解してから行動しようとする人は、動きが遅れやすく上達しにくい。
安全確認は重要だが、確認を続けすぎることでタイミングを逃すことがある。
助手席で他人の運転を観察してきた量は大きな差になる。普段から車の動きを意識して見ることが大切である。
一般道で止まれない速度、対応できない速度で走ることは危険である。車の限界や自分自身の限界を正しく把握することが、安全運転の前提となる。